2023年 10月例会 サンシャイン・ボーイズ

岡山市民劇場 2023年10月例会:サンシャイン・ボーイズ - 加藤健一事務所

加藤健一事務所
サンシャイン・ボーイズ

作:ニール・サイモン
訳:小田島恒志・小田島則子
演出:堤 泰之

公演スケジュール

岡山芸術創造劇場ハレノワ 中劇場
例会日
10/5 7時
10/6 1時
10/7 2時
10/8 2時
10/9 月(祝) 12時30分
西大寺市民劇場例会
西大寺公民館大ホール
例会日
10/10 6時45分
10/11 休館日
10/12 1時


上演時間:2時間25分(予定)

スタッフ・キャスト

Cast

  • 加藤健一
    ウイリー・クラーク
  • 佐藤B作
    アル・ルイス
  • 加藤義宗
    ベン・シルバーマン
  • 田中利花
    看護師 (ミス・オニール)
  • 照屋 実
    コントの患者
  • 韓 佑華
    コントの看護師
  • 佐野匡俊
    エディ (AD)
声の出演
  • 清水明彦文学座
    ディレクター
  • 加藤 忍
    アナウンサー

ニール・サイモン

小田島恒志
小田島則子

演出
堤 泰之

Staff

美術 乘峯雅寛
照明 古宮俊昭
音響 秦 大介
衣装 竹原典子
ヘアメイク 川村和枝
舞台監督 笹原久義
製作 加藤健一事務所

あらすじ

カムバックの条件は、史上最悪な相棒とのコンビ復活だった!

岡山市民劇場 2023年10月例会:サンシャイン・ボーズ - 加藤健一事務所 宣伝写真

ニューヨークの古びたホテルの一室で、悲惨な生活をおくるひとりの男、ウィリー・クラーク(加藤健一)。

元はヴォードヴィルの大スターコンビであったウイリーは、ひとりになった今でも、役者としてまだやれると思い、必死にもがいているものの、なかなか仕事にはありつけない。

ある日、テレビ局の副社長が頭をさげてお願いするほどの大仕事を、ウィリーの甥であるマネージャーのベン・シルバーマン(加藤義宗)が持ってくる。ウィリーは当然引き受けると思いきや、出演の条件は元相棒のアル・ルイス(佐藤B作)との〝サンシャイン・ボーイズ〟による往年の名作コントだと聞いて出演拒否の一点張り!

喜劇の黄金時代が生んだ史上最高の名コンビとまで言われたルイス&クラーク、11年ぶりの名コンビ復活となるのか⁉ ラストショーの最後に待ち受ける2人の運命は・・・?

岡山市民劇場 2023年10月例会:サンシャイン・ボーズ - 加藤健一事務所 フライヤー表岡山市民劇場 2023年10月例会:サンシャイン・ボーズ - 加藤健一事務所 フライヤー裏

えんげきの友より

コロナ禍を乗り越えて感動の舞台に出合う!

往年の名コンビ「サンシャイン・ボーイズ」。今は仕事もほとんどなく落ちぶれた生活を送り、相方は引退。そのコンビが一夜限りの復活をしてステージに立つことになり、久しぶりに顔を合わせて稽古を始めるが、お互いに意地とプライドを張り合って稽古はちっとも進まない。
この2人を演じる加藤健一さんと佐藤B作さん。登場しただけで笑いが起きる。喜劇といってもドタバタで笑わせるのではない。原作のニール・サイモンと演出のなせる業だとも思うが、2人の台詞のやりとりの間合いと動きが絶妙なのです! 共に劇団の座長として50年駆け抜けてきたカトケンとB作さんは息もピッタリでまさに最強のコンビ! 素晴らしかった。

 「徹子の部屋」で、もう久しく見かけない芸能人がゲストで出たりすると、「あの人も歳をとったなあ」なんて思うけど、人はいつまでも若くはいられない。頭も体も衰えが来て、でも往年の栄光は忘れられず…。そんな人生が透けて見える舞台は、今の自分にぴったり来るものがあった。笑って笑って楽しんでいるうちに、じんわりと沁みて泣けてきた。口ではいがみ合いながらも、心の中ではずっとお互いに思いを寄せ合っている2人の関係が、なんとも温かくて良かった。

*  *  *
2020年5月、「サンシャイン・ボーイズ」は公演直前にコロナが襲い中止に。準備した舞台セットも処分を余儀なくされたとのこと。
2年後の2022年5月、ようやく上演が叶った舞台を西宮で観た。広い劇場の2階席までぎっしり満員の客席。カーテンコールでB作さんが泣いているように見えた。コロナでの延期を乗り越えた感動を私も一緒に味わうことができた。
10月、岡山芸術創造劇場ハレノワ初の例会も、会場いっぱいの人で迎えたい。

( I T )

8月17日(木)に、加藤健一さんをお迎えして10月例会『サンシャイン・ボーイズ』の魅力に迫る会が開かれました。会場の天神山文化プラザ大ホールには、昼・夜合わせて350人が集い、加藤さんの楽しいお話に会場は笑いと熱気に包まれました。

以下、インタビュー形式で加藤さんからお話をお聴きし、概要をまとめました。 

加藤さん、ようこそ♡
JRなどダイヤが乱れた状況の中、よくぞ岡山へ
加藤実は昨日、岡山入りしていました。
最近は稽古の始まる2週間くらい前から「せりふキャンプ」をしているんです。若い時は、稽古始めの日に台本もらって2週間くらいで頭に入るのが、今はもう全然…。とにかく台本1冊覚えるために、事務所にも内緒の場所で1人合宿して、今回はそこから来ました。(1人合宿の場所は明かされませんでした)

加藤さんは役者生活50年。役者を目指したきっかけは?
加藤実は昨日、岡山入りしていました。
高校2年の時に、先輩が作った演劇部に誘われて、手さぐりで芝居を始めました。卒業後も演劇の楽しさが忘れられなくて、半年で仕事を辞めて東京に行って、俳優小劇場の養成所に入所しました。そこの座長の早野寿郎先生がとてもいい先生で、僕の一生の恩師です。「加藤君ね、舞台俳優っていうのは、芸術の女神の衣の裾に、一瞬でもいいから触れようとして、生涯ジャンプをし続けるものなんだよ」と言われ、その言葉がきっかけで、舞台俳優を目指そうと決めました。

舞台ならではの面白さとは?
加藤映画も舞台も、両方ともつくるのに時間がすごくかかるので、僕は両方やるのは難しいですね。映像というのは完成品なので絶対変わらない。舞台というのは、稽古場でつくるのは完成の一歩手前の原型で、そこから観客のみなさんと出会ってつくり始める。その日の舞台は役者にかかっている。幕が開いて、お客さんの反応を見ながらその日の舞台が進むので、役者の力にすごく任されている。毎日ずっと動いている。そこが一番の違い。役者にとって一番やりがいのあるところです。
だから芝居を観にくる人は、映画のようにストーリーを観るのではなく、「私たちが参加すれば舞台は変わるよ」っていうような気持ちで来てください。ほんとに変わりますから。そういう風にしてみんなでひとつの空間をつくるのが、芝居の良さです。満員の会場とそうでない会場とでは、その日の空間が違う。お芝居も人でいっぱいのお祭り騒ぎにしないといけない。そのために、会員さんはたくさん必要なんです。

キャスティングはご自分でされるのですか?
加藤僕はプロデューサーと役者をやっています。プロデューサーの一番大きな仕事は、作品を決める、役者を決める、スタッフを決める、演出家を決めること。そのために年間100本くらい戯曲を読みます。その中から年に2,3本を上演作品にします。決めたら演出家にすべて任せます。そのあとは絶対に口は出さない。演出家の言う通りにするのが僕の鉄則です。

役者生活50年・加藤健一事務所設立40周年の記念にこの作品を選んだわけは?
加藤若い頃からずっとニール・サイモンのファンで、6冊くらい出た全集の全作品を何回も読んでいます。読んだ時にはおじいさんの役なんかできないよ、と思っていたら、いつの間にか同じ歳になっていた(笑)。それでやるんならヴォードヴィルだな、B作さんとやってみたいなと思いました。

佐藤B作さんには加藤さんから声を掛けたのですか?
加藤そうです。B作さんと私は同じ歳で、演劇を始めたのも同じ頃です。B作さんは早稲田大学の演劇サークルで芝居を始めたそうです。それから50数年、ずっと同じ道を走り続けてきたんです。これまで一度も共演がなくて、いつかはやりたいと思っていました。
B作さんは「東京ヴォードヴィルショー」という劇団をつくって、人を笑わせることばっかりやっていた。僕はちょっと難しい芝居をやっていたのですが、B作さんも三谷幸喜作品とかいろんな人間ドラマをやり始めて、じゃあ一緒にやれると思ってこの芝居に声を掛けたんです。三谷幸喜さんの劇団の名前が「東京サンシャインボーイズ」。それぐらい三谷さんは「サンシャイン・ボーイズ」という芝居と、ニール・サイモンが好きで、劇団名にするくらい名作なんです。
B作さんは、ヴォードヴィルをやってた方だから、せりふとかアドリブで言うのかな、と思っていたんですが、稽古初日に全部せりふを覚えてきて、台本通りに言うんです。もうちょっとちゃらんぽらんな人かなと思っていたら、とても紳士で、ほんとに真面目な人で、びっくりしました。

『サンシャイン・ボーイズ』は、どんなストーリー?
加藤43年間一緒に舞台でやってきた2人のコンビが、天才同士なので、舞台に立つとすごく笑わせるんですが、あまりにも仲が悪くて、アル(B作さん)は去って行った。僕はピン芸人になり、それからうまく行かなくて仕事もなくなった。11年経って、テレビ局に勤めている僕の甥が、一世を風靡したサンシャイン・ボーイズ(コンビ名)に番組出演を持ち掛けてくるんです。自宅で稽古する間もずっと喧嘩ばかりですが、その間観客はずっと笑います。喧嘩しながら本番を迎えて、本番の舞台中に、今度は本当の喧嘩になってしまいます。アルは出て行ってしまい、結局録画できずに昔の映像を流すことになるんですが、僕が悪態をついている最中に心臓発作で倒れてしまい、ベッドに寝ていると、アルが見舞いに来て、ちょっと仲良くなるかと思ったら、また喧嘩。でもその芝居を、皆さんは笑い続けて観ているんですよ。役者の呼吸で笑うんだと思います。
43年間の芸人の絆というか、やっぱりあいつがいないとうまく行かない、他の奴じゃダメっていう強い絆があって、いざ何かを作ろうとなると、そいつじゃなきゃいけないっていうのがあって、その「絆」がテーマなのかな。それは私たちの日常の中で、夫婦喧嘩や兄弟喧嘩ばかりしているんだけども、やっぱりあいつじゃなきゃダメだとかね。それと似てるような気がします。

コメディーは、観ていてワクワクして、しかもジーンときて感動する。感動するとね、幸せホルモンが出るんです。それが健康にはとても必要です。泣いてもいいし笑ってもいいし、そのホルモンが出て健康になる、幸せになる。だから人間にはフィクションが必要なんです。どうしてこんな嘘のドラマを観るのかというと、きっと感動が必要なんです。感動がなくなってそのホルモンが減ると、調子が悪くなるんです。

ほかの共演者の方は?
加藤甥のテレビ局に勤めているベン役を、息子の加藤義宗がやります。彼は16歳から芝居を始めて今43歳。自分でプロデュース事務所「義庵」を持ってやっています。
ほかの方の出番はとても少なくて申し訳ないんですが。田中利花さんは本当の看護師役。韓佑華さんと照屋実さんは、コントの中の患者役と看護師役。韓さんはとてもグラマーで超ミニスカートの白衣を着た看護師役です。男性の方には喜ばれそう…(笑)。佐野匡俊君はテレビ局のアシスタントディレクター役です。清水明彦さんと加藤忍さんは声だけの出演です。

この作品は誰が観ても楽しめますか?
加藤僕とB作さんはこのお芝居で2人とも賞をもらってるんです(加藤さん=毎日芸術賞。B作さん=菊田一夫演劇賞)。喜劇作品で受賞することはあまりないので、素晴らしい作品だということが分かっていただけると思います。
人間って不思議なもので、隣に人がいるかいないかで、笑いが違うんですよ。人が笑っていると自分も笑うんです。だから笑う芝居の場合、満員か満員でないかですごく違うんですよ。満員だと、「ここで笑うの?」という場でも笑いが起きる。不思議ですね。お隣の人が喜んでいるとかワクワクしているとかの、波動が伝わるんでしょうね。

だんだんお芝居に慣れてくるとちょっと頭を使う難しい芝居も観たくなるんですが、これは入門コースのお芝居です。誰が観ても楽しいし感動するので、お誘いするにはぴったりです。絶対に喜ばれると思います。もし喜ばれなかったら僕が責任を取ります(笑)。
翻訳ものは難しいイメージがあるかもしれませんが、難しいことは何もないですよ。人の名前がカタカナなだけで、後は普通の日本語ですから大丈夫。しかも覚えなきゃいけない名前はほとんどないので(笑)。

最後に、市民劇場へのメッセージを
加藤なぜ観客が増えないのか。つくり手として問題だと思うのは、舞台のライブ感が伝わっていないのだと思います。つくられた物なら映画でもいいんです。それをもっと高いお金を出してお芝居を観るというのは、ライブ感しかありません。でも、アドリブに頼ると芝居が崩れていくので、そうじゃない方法で、どういうライブ感が出せるかっていつも考えています。 74歳になった今、つくる側の一番の問題点だと思っています。だから、頑張ってやってみますので、「1回観てごらんよ! はまるから」っていろんな人に言ってください。一緒に来ていただければ、「あ、これは映画館でもテレビの前でも観られないな」っていうのをお見せするように、最大限努力しますので、ぜひ誘って一緒に観てください !!