
劇団民藝
泰山木の木の下で
演出:丹野郁弓
スタッフ・キャスト
Cast
-
- 日色ともゑ
- 神部ハナ
-
- 塩田泰久
- 木下刑事
-
- 吉田正朗
- 須崎刑事
-
- 松田史郎
- 小使
-
- 八木橋里紗
- マリという女
-
- 横山陽介
- 出前持ちの青年
-
- 桜井明美
- 髪を垂らした女
-
- 神保有輝美
- 磯部の奥さん
-
- 吉岡扶敏
- 田舎ふうの紳士
-
- 平野 尚
- 若い船員
-
- 船坂博子
- 漁師の女房
-
- 天津民生
- 医者
-
- 佐々木郁美
- 看護婦
-
- 千葉茂則
- 歌を唄う男
-
- 湯淺 隆
- ギターを弾く男
- 湯淺 隆
-
- 吉田剛士
- ギターを弾く男
- 吉田剛士
Author
Director
Staff
装置 | 石井みつる |
---|---|
照明 | 前田照夫 |
衣装 | 緒方規矩子 |
音楽 | 斎藤一郎 |
編曲 | 湯淺 隆 |
編曲 | 吉田剛士 |
効果 | 岩田直行 |
舞台監督 | 深川絵美 |


あらすじ
昭和30年代頃のこと。瀬戸内海の小さな島で質素に暮らすハナ婆さん(63歳)。
庭には大きな泰山木の木がある。
貧しいながらも9人の子どもを産み育てたが、3人の子は戦死、残る6人の子までも、広島の原爆で亡くしていた。一人残されたハナ婆さんは島に移り住み、島のみんなからは、「ハナ婆さん」「ピカのハナ婆さん」と呼ばれ、とても慕われていた。
ある初春の時、木下という刑事が堕胎の容疑で逮捕状を持ってやってくる。子供に先立たれるという悲しい体験をもつハナ婆さんは、戦後人助けのつもりで、頼まれるとひそかに子どもを下ろしてやっていたのだ。以前にも密告で捕まったことがあったため、おとなしく連行されるが、処置をした人の名前は絶対明かさない。
船が出る時には、島のみんなに声を掛けられて明るく出発した。
警察署での取り調べでは、肝心なところでうまく話を逸らし、罪を認めない。事情は分かるけれども、法は法だと木下刑事。島のみんなも差し入れをしたり、嘆願書を提出する。
一方、木下刑事自身も戦争にまつわる深い悩みが・・・。
えんげきの友より
『泰山木の木の下で』は、宇野重吉さんの演出・北林谷栄さんの主演で長きに渡り再演を繰り返してきた劇団民藝の代表作。北林さん演じるハナ婆ちゃんの物語だった。今回の丹野郁弓さん演出で蘇った舞台は、日色ともゑさんをハナ婆ちゃんに配し、婆ちゃんに出会った瀬戸内の若者たちの群像劇の色彩が濃くなっている。婆ちゃんとふれあう中で、ひたむきに生きる若者たちがどう運命を受け入れ、どんな風に変わっていくか楽しみだ。
その若者の中心である木下刑事を演じるのが、笠岡市出身の塩田泰久さん。若く見えるが、20年近いキャリアがあり、作品を重ねるごとに一歩一歩地道に実力をつけてきた。日色さんとの共演も多く、息の合ったお芝居が期待できる。
今回音楽を担当するのは、ポルトガルギターとマンドリュートを演奏する2人組アコースティック・ユニット”マリオネット”。彼らの生演奏がまた素晴らしい!
千葉茂則さんの歌と共に物語の世界に誘う、きらびやかで哀愁の漂う音色が心に染み渡る。


転載:マリオネット・オフィシャル・ウェブサイト
公演地で「可愛い!」と評判の日色さんのハナ婆ちゃん。透明感のある声で、「ありゃりゃア」「~とみんさい」「~がんすぞ」といった台詞を特有のイントネーションで操り、劇作家小山祐士さんの優しい世界観を創り出している。世の中への怒りを抱えたまま仲間と笑い合い、喜び合い、互いに励まし合いながら懸命に生きるハナ婆ちゃん。可愛さだけじゃない逞しや子狡さも婆ちゃんの魅力!
ハナ婆ちゃんの大好きな泰山木の花は、白くて大きくて堂々としている花言葉は「壮麗」「前途洋々」―小山さんがこの花に託した祈りをしっかり受け止めたい。
制作 稲谷善太さんへのインタビューより

観劇の感想
各地鑑賞会の感想より
- 日色ともゑさんのかわいらしかったこと! 話す言葉も声も、そして姿も。この役を演じるために生まれてきた人のようでした。
- 被爆者の苦悩を描いた群像劇が、かわいらしいハナ婆さんが狂言回し的に存在したことで、優しい気分になれました。
- 「歌を唄う男」がマリオネットの伴奏で歌う「私たちの明日」は味があり心にしみました。
- 瀬戸内の方言が優しく温かかった。この話は戦争や原爆の傷跡が描かれてはいたが、教訓話というよりは困難を抱えながらも「生きる」―どんな時代でも普遍的なテーマがありました。
- ハナ婆さんは堕胎の罪に問われていた。しかし、望まない妊娠をして命を絶とうとしている女性が目の前にいたらどうしたであろうか? ハナ婆さんを誰が責めることができるだろうか。考えても答えは出ない。戦争や原爆の当事者でなければこの苦しみを理解するのは難しいかもしれない。この世に生を受けられなかった多くの命があったのだと思うととても切ない。
- 被告(ハナ婆さん)と刑事のやり取りなのに、まるで友だち同士の会話に見えた。戦後大変な時期に生きている人々が苦しみを乗り越えながら生きている優しさが刑事に垣間見えた。さすが劇団の財産演目だ。
- 「ケロイドの女」の、自らケロイドを負ったからこそ幸せに生きたいという願いが、口惜しさと共に、同じように原爆の苦しみを背負った木下刑事への共感となってほとばしる。その一言ひと言に涙があふれて仕方なかった。
- 親にとって子どもに先立たれるほど悲しいものはないと言う。また人は皆、他人には言えない苦しみを抱えていたりする。そして多くはそれを隠して生きている。このお芝居ではまさにそれを表現していて、とても見応えがありました。
次例会のたねより

日色ともゑ(神戸ハナ)
1945年8月15日を境に、生き方が変わってしまった人はたくさんいて、ハナ婆さんもそのひとりだと思います。強くて、たくましくて、ずるくて、島のみんなに愛されて可愛らしいハナ婆さん。堕胎(だたい)の常習犯だけど、それは純粋に「人助け」だと心から信じてやっている。その姿は、とても人間的です。
小山先生がとりわけ愛情を注いだのが木下刑事だと思います。木下刑事と頬にケロイドのある女、二人の孤独な魂が触れ合う場面の美しさ。マリという女や磯部の奥さん、姿は現れないけれど木下刑事の奥さんという若い女性たちの哀しみ、そして一縷(いちる)の希望。当てどない若者たちや市井の人々もみな豊かな表情を見せて、この芝居は群像劇の魅力が満ち溢れています。キャストのほとんどは、戦争を知らない世代の若い役者たち。いつにもましてアンサンブルに磨きをかけて、清新な舞台を創りたいですね。

塩田泰久(木下刑事)

桜井明美(髪を垂らした女)
木下にとって束の間のやすらぎに過ぎなかった彼女によって、彼の心は開かれていき、彼女の心にも温かいものが流れていきます。

千葉茂則(歌を唄う男)
(2019年12月「民劇の仲間」より)
公演スケジュール
- 岡山市民文化ホール
-
例会日 昼 夜 11/10 木 – 7時 11/11 金 1時 – 11/12 土 2時 – 11/13 日 4時30分 – 11/14 月 12時30分 –
-
西大寺市民劇場例会
西大寺公民館大ホール -
例会日 昼 夜 11/25 金 – 6時45分 11/26 土 1時 –