劇団前進座
出前芝居
くず~い 屑屋でござい
– 古典落語「井戸の茶碗」より –
- 岡山市民文化ホール
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例会日 昼 夜 3/17 木 – 7時00分 3/18 金 1時 – 3/19 土 2時 – 3/20 日 2時 – 3/21 月(祝) 1時 –
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西大寺市民劇場例会
西大寺公民館大ホール -
例会日 昼 夜 4/7 木 2時 6時30分
あらすじ
昔、江戸の町に正直清兵衛という働き者の屑屋さんがおりました。
ある日のこと、いつものように天秤棒を担いで、「くず~い 屑のおはらい」と裏長屋を回っておりますと、お侍の娘しづに呼ばれます。しづの父親はすでに亡くなり、母親の千代は病弱で働けず、家中の物はすべて売りつくしてしまい、その日の米にも困る始末。何か売るものはないかと、しづ達親子は困り果てていたのです。二人の暮らし向きを知った屑屋さんは、ほんの少しの紙屑でも快く引き取ってくれました。
そんな屑屋さんの人柄を見込んだ千代は、家に代々伝わる仏像を買ってほしいと頼みます。屑屋さんは断り切れず、仏像を二百文で引き取り、これより高く売れたときは、そのもうけは半分にしようと約束しました。
屑屋さんは、その仏像を持って、白金の細川屋敷のお窓下を通りかかります。すると、高木佐太夫という若い侍の目にとまり、仏像は三百文ですぐに売れたのです。屑屋さんは、いいことをしたと喜んでおりました。
それから少し時がたって、屑屋さんはまた佐太夫に呼ばれました。仏像をみがいていると中から五十両の金が出てきたというので、屑屋さんはびっくり仰天。
佐太夫はその金を千代に返すよう屑屋さんに言付けますが、千代は頑としてその金を受け取ろうとしません。
間に入った屑屋さんは両方の間を行ったりきたりと大弱り。ついにこれは大変と見かねた大家さんがあいだに入り、金を受け取る代わりに、千代から佐太夫に何か一品わたすことで話をつけます。
ヤレヤレと思ったのもつかの間、このとき千代が佐太夫にわたした茶碗が実は・・・・。
とうとう細川の殿様まで巻き込んで、てんやわんやの大騒動に!
スタッフ・キャスト
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- 柳生啓介
- 屑屋さん
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- 松涛喜八郎
- 大家さん
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- 浜名実貴
- 武家女房千代
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- 藤井偉策
- 高木佐太夫
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- 秋元辰美
- 千代娘しづ
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Cast
くず~い 屑屋でござい
屑屋さん | 柳生啓介 |
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武家女房・千代 | 浜名実貴 |
その娘・しづ | 秋元辰美 |
高木佐太夫 | 藤井偉策 |
大家さん | 松涛喜八郎 |
江戸のくらしってどんななの?
解説者 | 松涛喜八郎 |
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屑屋 | 柳生啓介 |
Scenario Writting & Direction
Staff
- 装置
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高木 康夫
- 照明
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遠藤 正義
- 音楽
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杵屋 邦寿
- 舞台監督
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川名 あき
えんげきの友より
江戸は人口百万人の、当時世界一の大都市。しかし、道端にゴミひとつ落ちていませんでした。それは、物を捨てずに大切に使うという、徹底利用のシステムがあったからです。
江戸の庶民は裏長屋に暮らしていました。物を大切に使い、直せるものは修繕し、着物などリサイクルできる物は徹底してリサイクルしました。
割れた瀬戸物茶碗などを再生する。欠けた木椀などを集め、修理再生したり、燃料として売る、古椀買いなどの商売がありました。
もうムリという物だけが燃料にされ、灰までも貴重な肥料として売買されており、まさにSDGsです。
紙 屑 屋
江戸時代、紙はとても貴重でした。紙屑屋は商店の使い古した帳簿とか、寺子屋で子どもが使った練習帳、書き損じた紙など買い取っていました。ボロ布も紙の繊維にするために買い、集めた紙やボロ布は、古紙問屋に売られ、さらに漉き返し業者に渡ります。
紙屑屋は、古紙の他に銅鉄、茶碗などの古道具も買っていました。
観劇の感想
各地市民劇場の感想文より
- 相手を思いやる親切の連鎖がみんなの幸せにつながり、見終わった後に心がほっこりしたお芝居でした。
- 前進座は時代物に慣れているだけあって、所作や話しぶりもさすがですね。あす食べる米もないのにやせ我慢する女房に、「いいかげんにしろよ」とちゃちゃを入れながら楽しく観ました。
- 会場が笑いに包まれ、人情味豊かな江戸の町が想像以上に広がり、作品に引き込まれました。
エコがうまく利用されていたのには驚きでした。私たちの生活は捨てる物にもお金をかけている、もっと簡素化すべきですね。人としてのあり方の原点に戻り考えさせられ、中身の濃いお芝居に感動しました。 - 心から笑える楽しい演劇鑑賞でした。古典落語の素晴らしい人情話は、決して日本人が忘れてはならない心が豊富に詰まっていると思いました。
- ストーリーは知っていましたが、前進座の舞台は、大衆演劇のようにギャグも入って、とても愉快でした。大団円の気持ちいい例会でした。三味線の杵屋邦寿さんの演奏もすばらしかったです。
- 落語の世界そのままに、江戸の情緒をたっぷり楽しんだ110分でした。松涛喜八郎さんの江戸時代の解説も楽しかったですし、三味線の演奏も迫力があってよかったと思います。やはり音楽も舞台もライブで楽しめるのが最高です。
- 江戸時代であるものの、人々が日々の暮らしを今と同じように、自分に合った暮らしぶりで生きてきたのだなぁ…と思われ、何か懐かしい思いが湧いてきました。貧乏な生活の中でも、正直に思いやりを持ち、生きている姿が心に残りました。
- どんどんスピーディーに、手のかからないものの方へ向かっている様な現在ですが、そんな時代だからこそ、昔のことを取り上げた物語を見せてもらいたいと思っています。この度の芝居は、日本人本来の心の優しさを、しみじみと感じさせる良い芝居でした。
次例会のたねより
私たちが失くしつつある大切な感覚を江戸の人々はたくさん持っていたのではないでしょうか
このお芝居は、親子三代で観ていただきたいという思いで作ったもので、当時、巷ではもったいないという言葉が流行っておりまして、そこから派生したエコの問題と、江戸の人情を絡ませて芝居に仕組んだものです。江戸時代を再認識してもらおうというのがこちらの思いでした。
しかしあれから十年、いま最も省エネが進んでいるのはその人情かも知れません。やっぱり近所付き合いなんてめんどくさいしなあ。もし江戸時代と今と、どちらに住みたいかと問われたなら、ほとんどの人は今、と答えることでしょう。しかしだからといって、現代社会の方が優秀かといえば、そうとは言えない。一つの時代で、これほど大量のエネルギーを消費してしまっては、子孫に残るのは負債ばかりということになってしまう。悲しいことです。
物を大切にする、人を思いやる心。私たちが失くしつつあるそういった大切な感覚を、江戸の人々はたくさん持っていたのではないでしょうか。このお芝居によって、その一端でも皆さんにお見せでき、楽しんでいただけたなら、幸いです。
(劇団パンフレットより)
『くず〜い屑屋でござい』によせて
桂 歌丸
前進座さんが落語の「井戸の茶碗」を題材に芝居をお作りになると伺い大変うれしく思いました。「井戸の茶碗」はよく高座に掛けさせていただいている落語です。ですから落語の観点から私なりの思いをお話しいたします。
この「井戸の茶碗」の聞きどころ(見どころ)は、まず悪人が一人も出てこないところにあります。登場人物の皆が「無欲」「人が良い」「義理人情に厚い」など後味の良い噺(はなし)です。演じる方としては登場人物が少なく、皆良い人なので模写が難しいのですが、今の時代に一番伝えたい、また教訓となるのでは、という思いで演じております。
江戸時代は道端にゴミがひとつも落ちていなかったと聞きます。様々な商売があり、屑屋さんもそのひとつですが、物を大切にする、また再利用するという文化があったのだと思います。
このお芝居を見て、日本にはこのような文化があったことを知って下さい。そして芝居を見た後は落語の「井戸の茶碗」も聴いて下さい。
(劇団パンフレットより)