
俳優座劇場プロデュース
罠
翻訳:小田島恒志 小田島則子
演出:松本祐子


- 岡山市民文化ホール
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例会日 昼 夜 7/1 金 – 7時00分 7/2 土 2時 – 7/3 日 2時 – 7/4 月 1時 – 7/5 火 12時30分 –
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西大寺市民劇場例会
西大寺公民館大ホール -
例会日 昼 夜 7/25 月 – 6時45分 7/26 火 1時 –

あらすじ
アルプス山脈が一望できるリゾート地、シャモニー郊外。
山荘で、若い男が呆然としている。3カ月前に結婚した妻が、ふとした喧嘩がもとで10日前に失踪してしまったのだ。
警察の捜査でも手がかりはなく、憔悴する男。
数日後、近隣の神父が「妻」だと連れてきたのは、会ったこともない女だった・・・。
正体不明の神父と女、混乱する警部、追い込まれていく男。果たして、真実は誰が語っているのか!?
スタッフ・キャスト
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- 石母田史郎
- 男
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- 加藤 忍
- 女
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- 清水明彦
- 警部
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- 西山聖了
- 神父
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- 里村孝雄
- 浮浪者
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- 上原奈美
- 看護師
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Cast
男 | 石母田史郎 |
---|---|
女 | 加藤 忍 |
警部 | 清水 明彦 |
神父 | 西山 聖了 |
浮浪者 | 里村 孝雄 |
看護師 | 上原 奈美 |
Author
Translator
Director
Staff
- 美術
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長田佳代子
- 照明
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賀澤礼子
- 音響
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藤平美保子
- 衣装
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前田文子
- アクション
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渥美 博
- 舞台監督
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泉 康至
- 演出助手
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日沖和嘉子
- 宣伝写真
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飯田研紀
- 宣伝美術
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ミネマツムツミ
えんげきの友より
だまされて、悔しい!
2018年3月の定期総会のゲストは加藤忍さんでした。当時、俳優座劇場プロデュースの新作舞台稽古中。制作の箱田雅幸さんとも相談して、稽古日を調整して来岡してくれました。その新作舞台が『罠』でした。
加藤さんは稽古中の舞台の役柄について質問された時、「人をだます役です」とにっこり。ちょうど1か月後、『罠』を観劇する機会に恵まれた私は、絶対にだまされまいと強い意志を持って観劇に臨みました。
新婚の妻が行方不明になり悲嘆にくれる夫。その夫の前に現れる「私が妻よ」と主張するまるで別人の女。それが加藤忍さんでした。
なんとも怪しい! でも、私はだまされないぞ。次々出てくる他の登場人物もみな怪しい。一体どんな詐欺に巻き込まれているの? 誰が誰をだましているの? 私はだまされてはいけないんだけれど…。
舞台の幕が下りて、なんともキツネにつままれた気分になってしまった。なんでこんな結末になるの!? つじつまが合うのかとしばらく席も立てず、茫然自失。落ち着いて物語の最後からさかのぼるように思い返してみると、つじつまがバッチリ合うのだ!やられた!
帰りにロビーで、演出をされた松本祐子さんを箱田さんが紹介してくれました。挨拶もそこそこに「こんなにきれいにだまされて悔しい!」と伝えると、松本さんはとても喜んでくれました。
きっとあなたも『罠』にはまってだまされますよ!(瀬川恵子)
観劇の感想
各地鑑賞会の感想より
- 面白かったです! まさに最後の最後に大どんでん返しでした。ドキドキハラハラ、ストーリー展開も、演出も、役者さんの演技も最高でした!
- 会話だけで謎が深まっていくあたり、最高でした。
謎が深まるにつれ、すべてが演技に見えてくるのが、とても演劇的で面白いと思いました。音楽のチョイスもとても良くてワクワクさせられました。 - あぁ~っ、なんてこったぁ! 悔しいことに最後の最後までこの劇中に巧妙に仕掛けられた‶罠〟からの脱出が叶うことがありませんでした。まるで蜘蛛の糸のように張り巡らされた罠にまんまとはまってしまいました。
- 観劇後、「罠」にはまり囚われた自身を思い出すと、そこには何とも言えない心地良さが‥。それほどこの劇中の「罠」は魔法のごとく私の心を迷わせ酔わせる何かがあったのでしょう!
- ラストは衝撃的でしたが、おそらく脚本や演技にもいろいろな伏線が仕込まれていたのだろうなと思いました。もう一度観たいです。
- お見事な結末! 最後の最後まで分からなかった。ただ、分かるとすべてがつながる点と線。点と点、線と線。そして演者全員の迫真のだまし合い!すげえ!
「わな」、まさしく、わな。
だまし合い、人間模様の神域! - お芝居の構成が巧みで、私たちの想像性を超えていた点、劇作家のロベール・トマの頭脳明晰さが分かります。脱帽です。皆さんの
演技もずば抜けていました。 - 出演者の皆さんはもちろん、美術、装置、照明、音楽など素敵です。窓や壁の塗りつぶし感や作りの雰囲気を、開演前にじっくりじんわり見とれつつ、物語の世界に入れる気がして良かったです。ワクワクドキドキ、時に笑いもあり、あっと言う間のひとときでした。
次例会のたねより
フランスの劇作家ロベール・トマの代表作ともいえるサスペンスコメディー。予測のつかないストーリー、張り巡らされた伏線、意外な結末といった、謎解きの醍醐味を満喫できる戯曲とあって、日本でも数多く上演されている人気作だ。今回は、青年座、文学座、東京乾電池、加藤健一事務所(元)と言った実力派劇団から選りすぐった曲者たちを、文学座の松本が束ねるという魅力的な座組は俳優座劇場ならではだ。
新婚3カ月の若夫婦が山荘に避暑にやってきた。だが、けんかの挙句、妻が出て行ってもう10日も経った。夫は警察に捜査を依頼するが、やって来た警部は何だか捉えどころがない。そんな時、地元の神父が、妻が帰って来たと告げに来る。だが、連れられてきたのは見たこともない女だった。
サスペンスの筋を言ってしまうほど興ざめなことはないので、ストーリー紹介はここまで。あとは観てのお楽しみだが、なるほど人気が腑に落ちる戯曲だ。登場人物は6人ぽっきり。誰もが裏の顔やいかがわしい影をうかがわせて、なかなか先を読ませない。状況は二転三転、かすかな希望の灯がともったかと思うとたちまち吹き消され、謎が謎を呼ぶ。あっと驚くトリックが、そのまま笑いにつながっていく。そのハラハラしながら、心地よい目眩感にちょっと三谷幸喜作品を連想したりする。
松本演出は緻密&ハイテンポ。観客に考える暇を与えないぞとばかり、グイグイ物語を転がしていく。しかし細部にもしっかり目を配り、周到に伏線を仕込んでいく。演技陣も快調だ。
余計なことを考える暇もなく、ジェットコースターのような展開に体をゆだねるあっと言う間の2時間20分。してやられた感いっぱいの幕切れが楽しくもちょっと悔しかった。(今村修:元朝日新聞演劇担当記者)